臓器提供者から摘出された肺の機能を、移植前に回復させる体外臓器維持装置が、23日に国内で初めて使われた岡山大病院(岡山市北区)の脳死肺移植。
手術終了後の同日夜に病院であった記者会見で、執刀医の大藤剛宏准教授は「提供される臓器が少ない日本で、一つとして無駄に出来ない。提供された全ての肺を使えるよう、技術を磨きたい」と装置の可能性に期待した。
肺は、提供者が脳死になるまでに水がたまる肺水腫になったり、たんが詰まったりして状態が悪くなり、他の臓器に比べて移植を断念することが多い。
装置を使った手術は欧米ですでに導入されており、大藤准教授が2006年のスウェーデン留学後、ノウハウを蓄積。動物実験など研究を重ね、11年に同大学 倫理委員会で実施の承認を取り付けた。今年9月下旬には、手術室で模擬訓練を実施。装置の使用手順など最終の確認をし、臓器提供者を待っていた。
装置は、つないだ肺に血液に似た特殊な液体を循環させながら、必要な抗生物質など薬剤の投与が可能。摘出した肺だけを装置につないでいることから、高濃度の薬剤を使用しても他の臓器に影響を与えることがなく、肺の中につまった血栓やたんの除去も容易という。
23日の移植は、午前11時に医師30人態勢で始めた。東京都内で前日に脳死と判定された30歳代の女性提供者の肺は、機能が著しく低下しており、装置の使用が必要と判断。装置に約1時間半つないだところ、摘出時の2倍にまで機能が回復した。