調べたい臓器から採取した細胞の成分を解析し、がんかどうか診断できる装置を山梨大や島津製作所(本社・京都市)などの研究チームが開発した。
採取には、はり・きゅう用の針を使うため痛みはほとんどなく、診断時間も約2分と短時間。来年1月から臨床試験を始め、3〜4年後の実用化を目指す。同大では「経験を積んだ病理医が長い時間をかけて行っているがん診断を迅速、簡単にできる」としている。
開発に携わる同大医学部の竹田扇教授(45)(分子細胞生物学)によると、針の先端の直径は、1ミリの数千〜1万分の1程度。装置では針の先端部を調べた い臓器に一瞬触れさせただけで、臓器を作る細胞の膜付近の脂質が採取できる。その後、島津製作所でノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんが開発した「質量 分析法」を応用し、脂質の中にどのような成分が含まれているかを調べ、その結果から2分程度でがんかどうかを判定する。
がんと判定する際に使うのは、装置内に蓄積したデータベース。実際のがん患者から得られた検体と、がんでない正常な検体の脂質の成分を竹田教授らが装置に 記憶させた。現在、肝臓や腎臓、大腸や胃などで合計2万パターン以上のデータベースができあがっている。診断は蓄積したデータベースとの比較で行うが、腎 臓や肝臓では9割以上の確率でがんかどうかの診断ができているという。
装置は、来年1月から横浜市立大学付属病院の泌尿器科で試験導入さ れ、腎臓がんの診断で臨床試験が行われる予定だ。内視鏡検査などで患者の臓器を2ミリ角程度採取し、診断に役立てる。試験期間は約1年間を予定し、その 後、実用化に向けた検討に入る。肝臓がんでの試験も検討中という。