正常なお肌の表面には皮溝という格子状の溝が走って、肌に十分な水分が含まれています。顔のお肌の荒れている患者さまでも、首の皮膚は、白くにきびもなく拡大視すると正常なことがほとんどです(左の写真)。
ところが顔のニキビで荒れたお肌は、表層の皮溝が削りとられて失われ、炎症で赤く擦り切れているのがわかります。毛穴も肌がすりむけた状態なのでむき出し になっています。お顔がかゆくて痛いという患者さんが多いのですが、ケガをしているのに近い状態なので、無理もありません(右の写真)。
そして、こうなってしまう原因が、洗顔である場合も多いのです。
このような患者さまに問診していると、ニキビに気をつかうあまり、思い切り強く洗顔しすぎている人が多いように感じます。清潔第一とばかりに、繰り返し強 力に洗浄したり、悪い皮を剥がそうと考える人もいるようです。そのような手荒いお手入れをしていない首の皮膚は、皮溝もはっきり出た白い美しい肌のまま、 というわけです。
当院ではまず、ニキビの患者さまには、どのように洗顔をされているか、何を使って顔を洗っているかについて問診票で先にお尋ねします。
例えばブラシで顔のお肌を洗っている方もいらっしゃいます。もし、すでに傷だらけで赤ら顔のにきびの人が、ブラシで患部を洗ってしまうと、損傷面がさらに削られてしまうだけなので、お肌の調子は悪くなってしまいます。
またネットなどの情報で、「洗顔のあと100回すすぐ」ことを目標にしている方など、極端な美容法をなさっている方もいらっしゃいます。同じく、拡大して見ると、傷だらけのお肌です。
洗顔といえば、洗顔剤の選択も大切な要素です。
ニキビ用洗顔剤の中には、「肌を滑らかにするため」という理由で、角質を溶かす成分が含まれているものも少なくありません。しかし、日本人のお肌は元々と ても薄いので、長期間こうしたピーリング作用のある洗顔剤を使っているとお肌に悪影響が出ることがあります。患者さまの中には、長引いているニキビ肌を隠 すために一段と濃いメイクを行い、それをまた肌を傷をつけながら強い洗顔で落している悪循環に陥っている方もおられます。
表層が傷つくと、開いてしまった毛穴に化膿菌が入りやすくなり、さらにニキビができてしまいますから、状態はより悪化するわけです。
こうした状況の患者さまに、ダーモスコピーの画像をご覧いただくと、自分のお肌の状態に初めて気づいて愕然とされます。