2015.12.20 Sunday
「アスピリン」の大腸がん予防効果を確かめる7000人規模の臨床試験
解熱鎮痛薬として知られる「アスピリン」の大腸がん予防効果を確かめる7000人規模の臨床試験を、国立がん研究センター(東京都)や大阪府立成 人病センターなどのチームが始めた。数百人規模の研究ではすでに確認されている効果をさらに詳しく調べて予防法の確立を目指す。研究チームによると、別の 病気の治療に使う薬でがんを予防する試みは初めて。
臨床試験は、日本医療研究開発機構の支援で、10月に始まった。研究チームの代表を石川秀樹・京都府立医大特任教授が務め、全国約20施設が参加している。
計画によると、大腸がんになる危険性が高い大腸のポリープ(腺腫)を切除した40〜69歳の7000人が対象。ポリープの大きさが1センチ以上なら、25%ががんになるとされる。
対象者はアスピリンの一種・バイアスピリン(バイエル薬品)を4年間、毎日1錠(100ミリ・グラム)服用する。その後3年間かけて、同様にポリープを切除し、薬を飲まない3000人を対象とした別の臨床試験と、がん発症やポリープ再発を抑える効果の有無を比較する。
バイアスピリンは医師の処方が必要で市販されていない。血を流れやすくする作用があり、脳梗塞や心筋梗塞の治療に使う。重い副作用は少ないとされるが、脳出血や胃潰瘍を起こすこともあるため安全性も慎重に確かめる。
欧米では1980〜90年代、「アスピリンを長期間服用している人に大腸がんが少ない」という研究報告が相次いだ。日本でもポリープを切除した約300人 の臨床試験で、バイアスピリンを毎日服用すると、服用しない人よりポリープ再発率が4割抑えられたとする研究が昨年発表された。